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各種検査の解説と参考値

(下線のあるものは厚生労働省特定健診の指定項目です)

・体脂肪率:

 肥満は多くの病気の温床と言われていたが最近では過剰な脂肪組織(特に内臓脂肪)が様々な代謝異常を引き起こすメタボリックシンドローム(後述)という概念が確立された。
 体重が軽くても筋肉が少なく(サルコペニア)、脂肪の割合が多い人(かくれ肥満、標準体重肥満、サルコペニア肥満)も同じ傾向をもつ。これは体脂肪率から脂肪重量とそれ以外の除脂肪体重を求め、標準体重と比較することで推定する。
 体脂肪率測定は身体の電気抵抗(インピーダンス)を用いるので空腹、排尿後等の条件を一定にする。下肢のむくみ(浮腫)があると実際より低い誤差を生じる。
 体脂肪率の許容範囲は男性25%未満、女性30%未満程度であるが、年齢と性によって幅がある。報告書の目標体重は許容範囲の上下限と中間値から算出してある。
 体格の評価には以下の指標も重要である。

体格指数(BMI)

体重(Kg)÷[身長(m)×身長(m)]でもとめる指数。 22を標準、25以上を肥満とする。一般的な基準である

ウエスト周囲径、ウエストヒップ比(W/H)、ウエスト身長比(W/Ht):

 同じ体脂肪率でも内臓脂肪が多い場合は特に肥満に伴う各種の生活習慣病が起こりやすい。腹部がせり出した体型となり、ウエスト(臍の高さの周囲)が指標となる。実測値で男性85cm、女性90cmが警戒値とされるが、身長や臀部径等全体の体格も加味する指標もある。W/Hは男性で0.85以上、女性は0.8以上で要注意、W/Htは0.5以上が要注意とされる。
 これらの指標は個人差、測定誤差が大きく厳密性を欠くため、正常・異常という判定を行うべきものではないが経年的な変動を見ると意義は大きい。

 昔は結核、今は肺ガン等の呼吸器疾患の診断に大切であるが、心臓や大動脈等循環器の情報も得られる。過去の炎症の痕跡や加齢による変化も観察される。大動脈の延長、突出、蛇行、石灰化等の動脈硬化性変化は加齢によって生じるが、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙等動脈硬化危険因子がある場合は早くから現れ、より高度に進行する。

 努力性肺活量。息をできるだけ深く吸い込み、できるだけ速く、残さず吐き出す。肺活量と速度を測り、肺の容積と細い気管支の抵抗を調べる。肺活量は予測値の80%以上(%肺活量)、1秒間でその70%以上を吐き出せれば(1秒率)正常とする。長期の喫煙で生じる慢性閉塞性肺疾患(COPD)では一秒率の低下が大切な手がかりである。加齢でゆっくりと低下する。正常範囲でも年々の低下が早ければ要注意である。

・安静時心電図:

 心臓の電気活動から病気の診断をする。各種の不整脈、心室や心房の肥大、負荷、虚血等で生じる変化をとらえる。一日10万回前後ある心拍のごく一部の記録である。

・血圧:

 心臓の拍動と動脈の弾性で生じる圧力を上腕で測定する。主に高血圧の診断が目的である。(低血圧が問題となることはまれである)高血圧は遺伝的な体質と生活習慣、年齢が関わりあう複雑な病気(状態)であるが、日本人は中年世代以後で非常に多く、その結果の脳卒中患者も多い。大きな原因は日常的な塩分の過剰摂取である。
 高血圧はそれだけでは自覚症状がない。長期間持続して心臓、脳、腎、血管等が故障すると症状が出る。進行防止には自覚症状のない早期に診断し、塩分制限等の生活改善や降圧薬治療で正常血圧を維持する必要がある。
 血圧は連続的な数値であり、基準値は単一ではない。最近は下表のように分類されている(日本高血圧学会2014年ガイドライン: JSH2014)。正常高値でも他の動脈硬化危険因子、特に糖尿病がある場合は早くから降圧剤治療を始める。

(治療の目標はこれとは別に容態により個別に定める)

分類 収縮期血圧
(上の血圧)
  拡張期血圧
(下の血圧)
至適血圧 <120 かつ <80
正常血圧 <130 かつ <85
正常高値血圧 130-139 または 85-89
Ⅰ度高血圧 140-159 または 90-99
Ⅱ度高血圧 160-179 または 100-109
Ⅲ度高血圧 180≦ または 110≦
(孤立性)収縮期高血圧 140≦ かつ <90
家庭高血圧 135≦ または 85≦

・運動負荷試験(トレッドミル):

 回転するベルトの上で段階的に傾斜を強めながら歩き、心電図、血圧、自覚症状、全身状態等を調べる。安静状態では心電図や血圧に異常のない人でも運動をすると異常が現れることがある。特に狭心症等の虚血性心疾患の診断に大切である。高血圧体質を持つ人は若いころから運動中の血圧上昇が強いことが前兆となる場合がある。
 普段、運動しない人が突然激しい運動をすると隠れた病気が現れて危険な場合があるが、あらかじめ運動負荷試験を行うことで危険を予測することもできる。疾患のない人も運動負荷試験によって自分の限界と安全範囲を知ることができる。

 眼球内の液体(房水)の流れに障害があると圧力が上昇して、痛みの発作や視神経の障害を来す(緑内障)。眼球に風を当てて硬さを調べることでスクリーニングする。[20mmHg以下]

 眼球の奥の網膜にある細い血管を写真に撮り撮影して、高血圧や動脈硬化、および糖尿病等による変化を調べるスクリーニング検査である。ただしドックでの眼底写真では眼底の一部中心部付近だけの所見に限られるため。明らかな糖尿病を有する場合や眼科的な病気がある時はドックでの眼底写真では不十分で、眼科医での定期専門的にな診察を受ける必要がある、眼科疾患の診断には適していない。

 造影剤のバリウムを飲んで行う検査。主な目的はガンの検査だが、潰瘍や慢性の粘膜萎縮、肥厚等が副次的所見として診断される。中高年者にしばしば見られる胃粘膜の萎縮(慢性胃炎)は長年にわたり繰り返された炎症の結果起こる粘膜の変化で、それ自体は病気として問題ではないが、胃ガンが発生しやすくなる下地といわれている。
 ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)の持続感染により、胃・十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎が生じると保険診療で除菌治療を行うことができる。胃炎では内視鏡検査による診断が条件になっている。
 胃と食道の接合部は加齢とともにゆるみ、しばしば胃が横隔膜より上にはみ出る食道裂孔ヘルニアが生じる。さらに胃内容の逆流、胸焼け、咳等の症状が起こると胃食道逆流症となる。肥満、過食、高脂肪食、食後の横臥、深夜食等で起きやすい。

 腹部の臓器のうち肝臓、胆嚢、胆管、膵臓、脾臓、腎臓等を調べる。腫瘍、結石等の病気を診断する。胆嚢ポリープや各種嚢胞等の良性所見も高率に見出される。
 胆嚢ポリープの多くは放置しても問題ないが、まれに成長の早いものや直径1cm以上に達するものは悪性化する場合があるので、変化を見るため経過検査、二次検査をすすめている。
 腎臓に結石や小さな石灰化を持つ人は近年非常に増えており、各種の生活習慣病に関連する兆候として注目される。

 大腸ガンは微量の出血を起こしやすい。大便の中に含まれる微量の血液色素成分(ヘモグロビン)を調べてスクリーニングする。良性ポリープ、憩室、痔、炎症等でも陽性に出ることがあり、女性では生理にともなう偽陽性もある。ガンに特異的な検査では無く、陽性の場合は内視鏡等の二次検査が必要である。

 多数の検査を行うが、各項目が病気と一対一で対応することは少ない。病気によって複数の項目が特定のパターンで変化する。単純に正常値と比較するだけではなく、過去の検査との比較、継時的な変動や個人の体質等も考慮して診断する。詳細は専門書を参照されたい。
([ ]内は基準参考値:平成25年4月より一部変更)

 肝臓の機能だけを表すものではないが、習慣的にこのように表現される。多くは臓器の障害や負荷の増大で数値が増える。

GOT(AST) グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(酵素)[6-33]

 肝臓、心臓の筋肉、骨格の筋肉等に多く含まれる。

GPT(ALT) グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(酵素)

 [≦40]:肝臓の細胞に多く含まれる。
GOT、GPTはいわゆる肝機能検査の中で最も有名である。肝臓実質の細胞に障害があると増加する。増加の程度、両者の比率、時間的な変化等が大切である。

・γ-GTP ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(酵素)[≦40]

 肝臓、胆道(胆汁の流れる経路)に多い酵素。これらの臓器の病気で増加する。アルコールや薬物を代謝する時も増加する。肝臓のオーバーヒートを表す温度計のような指標である。アルコール過剰で増加する人は非常に多い。脂肪肝でも高値を示す。最近は様々な健康食品でも異常を示す人がいる。100以上が続く人は肝硬変の予備軍として慎重な観察、注意が必要である。

・ChE コリンエステラーゼ(酵素)[229-521]

 肝機能、栄養状態等を知る手がかりになる。脂肪肝(過剰栄養)でも増加する。

・LDH 乳酸脱水素酵素[106-211]

 肝臓、腎臓、筋肉、血球等様々な組織に含まれる。原因は問わず組織の障害で増加する。

・AlP アルカリフォスファターゼ(酵素)[104-338]

 肝臓、胆道系や骨の障害、時に甲状腺機能亢進症で増加する。

・T-Bil 総ビリルビン[0.2-1.2]

 古い血液の血色素が肝臓で分解され胆汁中に排泄される色素。大便の色の元。血色素代謝、肝機能、胆汁排出経路のどこかに問題があると増加。黄疸はこれが増加して身体が黄色くなる状態。多少高値でも他の検査に問題がない場合は異常としない。元々高い体質の人もいる。

・TP 血清総蛋白[6.5-8.0]

 血清中に含まれるタンパク質の総量。主成分は次のアルブミン、グロブリンだが、その他100種類以上ある。栄養障害、合成する肝臓の機能障害で低下。慢性腎臓疾患でも尿中流出のため低下する。

・Alb アルブミン[3.8-5.5]

 総タンパクのうち、栄養、物質の運搬等に大切な成分である。

・A/G アルブミン/グロブリン比[1.2-2.3]

 総タンパクのうちアルブミンとグロブリンの比。
どちらの成分が変動したかにより結果の解釈が異なる。

・HBs抗原

 B型肝炎ウィルス感染を調べる。これが陽性でも他の肝機能に異常がない場合、ウィルスが変異して共存状態になっていることがある。

・HCV抗体

 C型肝炎ウィルス感染を調べる。抗体検査なので陽性であっても既に治癒している場合もある。判定限界程度の弱陽性は通常治癒後であるが、ごくまれにはウィルスが検出される。

・アミラーゼ AMY(酵素)[41-112]

 膵臓と唾液腺にある消化酵素。これらの障害で増加。単独の軽度上昇はしばしば見られるが病的であることは少ない。自覚症状や他の検査結果と合わせて診断する。

・中性脂肪 TG[30-120]

 食物から入った脂肪と、余ったエネルギーを貯蔵するために肝で合成される脂肪が一緒になったもの。高中性脂肪、脂肪肝、肥満はエネルギー供給過剰、消費不足が長期間続いていることを示す一連の出来事である。高中性脂肪は動脈硬化多重危険因子のひとつとして重視されている。
体質的に中性脂肪の上がりやすい人では、暴飲暴食の後等に著しく上昇し膵臓の壊死(急性膵炎)を引き起こすことがある。激しい腹痛と多臓器の障害を生じ、時に生命にかかわる。

・総コレステロール T-Cho[130-220]

 本来人体にとって大切な物質であるが、過剰状態では動脈硬化の原因となる。食事からの摂取と体内で合成されたものの総和をあらわす。総量だけでなくHDL、LDL等の内訳が重要視される。

HDLコレステロール HDL-C (高比重リポ蛋白コレステロール)

 [男40≦ 女50≦]:いわゆる善玉コレステロール。総コレステロール中に占める割合が多いほど動脈硬化に対して抵抗力を持つ。悪玉(LDL-C)との関係を見ることも必要である。

LDLコレステロール LDL-C (低比重リポ蛋白コレステロール)

 [<140]: いわゆる悪玉コレステロール。これが多いほど動脈硬化が起こりやすい。(動脈硬化学会では計算法、厚生労働省では直接測定法で判定するため両者を記載している)

・nonHDLコレステロール nonHDL-C(非HDLコレステロール)

 [<170]総コレステロールとHDLコレステロールの差。大まかな脂質指標だが、食後の検査でも評価が出来る。
 動脈硬化学会の「動脈硬化予防のためのガイドライン2007」で高脂血症の診断名を「脂質異常症」と改め、LDL-C高値、HDL-C低値、TG高値のそれぞれを重視することとした。さらに脂質だけではなく、動脈硬化性疾患の既往や糖尿病、高血圧、喫煙等他の動脈硬化リスクをあわせて評価し、高リスクほど積極的に治療して動脈硬化発症を予防すべきとした。

空腹時血糖 FBS,GLU(ブドウ糖、血糖)[60-109、厚労省特定健診では<100]

 ブドウ糖(血糖)は全身組織のエネルギー源として重要な物質である。糖尿病は組織がブドウ糖をうまく利用できなくなり血中にあふれた状態と言える。過剰なブドウ糖は長い年月の間に血管、網膜、腎臓、神経等を障害して糖尿病合併症を起こす。血糖は食後に上昇、空腹で低下を繰り返している。前夜から朝まで8時間以上の絶食で測定したものを空腹時血糖と呼び、診断の基準にする。食後の数値も大切である。

グリコヘモグロビンA1c HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビンA1c NGSP(国際標準値)[<5.9](厚労省特定健診では<5.6)、現在この国際標準値が診断、治療の基準となっている。JDS(日本糖尿病学会値)[<5.5]:平成24年までの旧基準)

 酸素を運ぶ血色素(ヘモグロビン)にブドウ糖が結合したもの。過去1~3ヶ月間の血糖値変動の平均を反映する。空腹時血糖が低値でもグリコヘモグロビンが高値なら食後の血糖が高い可能性がある。空腹時血糖とHbA1cのいずれかまたは両者が高値の場合、糖尿病か、糖尿病の初期(耐糖能障害、境界型糖尿病)を疑う。空腹時血糖が126以上かつ/またはHbA1c-NGSP6.5%以上の条件を糖尿病型とされ、再検査や糖負荷試験等で確認して糖尿病と診断する。
 糖尿病は症状が無いまま数十年を経て重症化し、様々な合併症が大問題となる。進行予防には、ごく早期から、自覚症状ではなく、検査データを元に対策をとる必要がある。
 日本糖尿病学会は平成24年に日本標準値(JDS)を世界標準値(NGSP)に変更して、約0.4%高く表示することになった。
 平成25年、治療目標のNGSP値基準として、正常目標値6.0%未満、治療目標値7未満、困難な場合の目標値8未満が設定された。(熊本宣言)

・インスリン IRI [1.84-12.2]

 糖、エネルギー代謝の主要ホルモン。不足状態では糖尿病となるが、細胞のインスリン感受性によっては少量で十分な場合や多量に必要な場合等が生じる。多量のインスリンは腎臓等一部の臓器では有害作用を生じる。

・インスリン抵抗性指数 HOMA-R[-1.6] 

 自分の膵臓が作るインスリンの作用が低下すると上昇する指標。血糖値を保ち糖、エネルギー代謝を維持するために多量のインスリンを必要とする状態。メタボリックシンドロームで生じる一連の代謝異常の中核を成す代謝異常である。過剰な脂肪細胞(特に内臓脂肪)が産生するサイトカインがインスリンの作用を妨げる。肥満とともに高値をとる人が多い。インスリン抵抗性が生じると大量のインスリンが分泌されて高血圧、腎障害等他の代謝異常を助長する。メタボリックシンドロームにはインスリン抵抗性症候群の別名がある。インスリン抵抗性が持続すると糖尿病や動脈硬化性心臓血管病などを発症する可能性が増す。

・尿酸 UA[男3-6.8、女2.5-6、診療指針基準-7]

 プリン体代謝の最終産物。体内での過剰生産(特に肥満がある時)、プリン体を含む魚卵、内臓等の動物性食品や果物、アルコール(ビールに限らない)の過剰摂取等で上昇しやすい。腎から排出する能力も影響する。高値では痛風や腎障害、尿路結石の原因となる。肥満ではしばしば高値となる。激しい運動で上昇する場合もある。診療ガイドラインでは7以上が要注意で、8以上は決して放置してはいけない。治療は6以下を目標にする(6-7-8の法則)。高血圧、高脂血症、糖尿病等を合併しがちであり、これらと同様、動脈硬化危険因子(メタボリックシンドローム参照)のひとつとして考える必要がある。

・BUN(UN) 尿素窒素[8-20]

 血液中の老廃物。タンパク質代謝の最終産物。蛋白の摂取、分解、腎機能等を反映する。運動量が多いときや脱水傾向のときも増加することがある。

・Cr クレアチニン[男0.6-1.1、女0.4-0.8]

 同じく老廃物。筋肉の蛋白の代謝産物。腎機能を反映するが性、年齢による影響が大きく、次項のeGFRに換算して評価することが推奨される。

・eGFR 推定糸球体濾過率[≧60]

 クレアチニン、年齢、性から計算で求めた腎機能評価指標。(2008年ガイドラインによる計算式使用)加齢、高血圧、脂質異常、糖尿病、タンパク尿、喫煙等腎臓に負担をかける要素で低下し、低下とともに動脈硬化が加速される。30以下では腎不全となり人工透析が必要になることがある。悪化要因の治療で進行を遅らせ改善することは出来る。

・血清電解質

 人体の恒常性を保つのに大切なミネラルである。
特に以下の3つは全身の細胞の環境を調節する上で特に大切で、厳密な制御を受けている。

  • Na ナトリウム[135-145]:Na自身と水の代謝を反映。
  • K カリウム[3.5-4.8]:細胞内に多量に含まれ、細胞の機能維持に重要。
  • Cl 塩素[98-107]:Naと共に体液浸透圧維持に重要。

・Ca カルシウム[8.8-10.2]

 骨、歯の構成成分。他に血液凝固、神経伝導、筋収縮、ホルモンの作用等にも必要。副甲状腺ホルモンの異常、腸の吸収、腎の排泄、骨の代謝等を反映する。尚、血液中の濃度と体全体のカルシウム量は別であり、この数値からカルシウム不足を診断することはできない。

・In-P 無機リン[2.8-4.3]

 細胞のエネルギー代謝に重要。腎の機能に影響を受ける。Ca代謝とも関連が深い。

・白血球数 WBC[45-90]

 顆粒球、リンパ球、単球等白血球の総数。各種の疾患で増加、減少をみるが、増加は免疫系の反応によるものと腫瘍性増殖によるもの、減少はやはり免疫系の反応による場合と産生障害、破壊亢進等に大別される。多量喫煙でも時に増加し、動脈硬化の徴候とされる。

・赤血球数 RBC[440-530(M), 380-500(F)]

 貧血や赤血球増多症の有無、程度を見る。以下の項目と同時に判断する。

・ヘモグロビン Hgb[13-18(M), 12-16(F)]

血色素、血液の赤い色のもと。酸素運搬の主役。

・ヘマトクリット Hct[40-53(M), 37-49(F)]

 全血液中に血球成分の占める割合。
さらに下記の赤血球恒数を算出して貧血の詳細を診断する。

  • MCV[89-99]:平均赤血球容積、MCH[29-35]:平均赤血球ヘモグロビン量、MCHC[30-36]:平均赤血球ヘモグロビン濃度。アルコール多飲が続くとMCVは大きくなる。

・血小板 Plt[13-35]

 血液凝固を担当する成分。血液疾患以外に、慢性肝炎や肝硬変で減少することがある。

・血清鉄 Fe[男80-140、女 70-120]

 酸素の代謝過程を担うヘモグロビン、ミオグロビン、チトクローム等の重要な構成成分である。供給、貯蔵状態と消費、喪失を反映する。個人の変動幅が大きく、低値は必ずしも鉄不足を意味しない。

・CRP C反応性蛋白[0-0.30]

 身体のどこかで炎症が起こっていることをあらわす。炎症の原因は特定できない。近年では動脈硬化に伴う軽度の上昇も重視されている。

・RPR 梅毒血清反応[陰性]

 過去の梅毒の感染をあらわす。ある種の膠原病等では偽陽性となることがある。

・TPHA 梅毒血清反応[陰性]

 こちらは病原体の梅毒トレポネーマに対する抗体を調べる。過去の梅毒感染が確認される。

・CEA 癌胎児性抗原[0-5]

 大腸、肺等ある種の癌細胞によって作られる物質。病状の推移や再発の有無を調べるのに有用だが、スクリーニング効果は少ない。喫煙習慣でもしばしば軽度の上昇を示す。加齢に伴い上昇する場合もある。

・PA(PSA) 前立腺特異抗原[0-2.8](男性のみ)

 前立腺癌が存在すると高値を示す。良性肥大では10未満が多く、10以上は癌を疑う。増加速度が早い場合も癌であることが多い。軽度の上昇(4未満)では単に経過観察し、4以上では泌尿器科専門医が経過を見ることが望ましい。

・CK(CPK) クレアチン(ホスホ)キナーゼ(酵素)[24-195]

 全身の筋肉に含まれる酵素。異常増加はどこかの筋肉の障害を疑う。運動ではしばしば200以上、強い運動や外傷では500~1000以上に増加し、肝機能のGOTもわずかに増加することがある。

 血液と比べると項目数は少ないが、手軽な検査である。

・比重

腎臓の濃縮能力を反映。

・pH

 腎臓の酸を排泄する能力を反映。
酸性に片寄ると尿酸の排泄が低下する。

・蛋白[-]

 腎臓が障害された場合に漏れ出すことがある。
±程度の弱い陽性であっても慢性腎臓病(CKD)の現れである場合がある一方、異常がなくても運動等の刺激で陽性になることもある。

・糖[-]

 血糖が高い場合に腎臓から漏れ出すことが多い。

・ウロビリノーゲン[-,±]

 ヘモグロビンの代謝産物であるビリルビンが肝臓から胆汁に分泌、腸管で腸内細菌により変化、再吸収後に腎臓から尿中に出たもの。この過程のどこかに異常があると増加ないし減少する。変動が大きい。

(*)メタボリックシンドローム(代謝症候群)について

 かつて脂肪組織は単なるエネルギー貯蔵庫と考えられていたが、近年代謝の調節を行う物質(アディポサイトカイン、アディポカイン)を分泌するホルモン産生臓器であることが分かってきた。
 肥満(体脂肪増加、特に内臓脂肪の過剰蓄積)では脂肪細胞の肥大と機能障害が生じ、アディポカインの異常が生じる。その結果、エネルギー代謝異常、さらに高血圧、高中性脂肪、低HDLコレステロール、糖尿病(耐糖能障害)、等の動脈硬化危険因子が連続的、同時多発的に現れる。いずれの異常も初めは自覚症状が無いが、水面下では動脈硬化が進み、数十年の経過を経て、最終的に心臓、脳、血管等、循環器の病気(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞等)が発症する。過去には別々の病気と考えられていた疾患が共通の基盤を持つことが明らかになり、「メタボリックシンドローム」という概念に集約された。
 現行の診断基準(内科学会、8学会合同基準:2005)は広く注意を促す観点から非常に単純化されている。脂質異常、血圧異常、糖代謝異常はそれぞれ単独であれば軽症、境界とされる程度の値である。尚、平成20年4月から行われている厚生労働省特定健診ではより厳しく設定されている。

内臓脂肪(腹腔内脂肪)蓄積
ウエスト周囲径男性 85cm以上
女性 90cm以上
上記に加えて以下のうち2項目以上
高中性脂肪血症 150mg/dl以上
かつ/または
低HDLコレステロール 40mg/dl未満
男女とも
収縮期血圧130mmHg以上
かつ/または
拡張期血圧 85mmHg以上
空腹時高血糖 110mg/dl以上

 内臓脂肪量は本来CTスキャン等で測定する必要があるが、ウエスト周囲径(腹囲)は内臓脂肪量と大まかに相関することからスクリーニング法として取り入れられた。しかし血液検査や血圧測定ほどの厳密性はないので目安程度に考える必要がある。
 ウエスト値が基準以下でも検査値が該当すれば代謝の異常はメタボリックシンドロームと考えるべきである。
 過去に動脈硬化の原因を探る様々な研究の中で、一人の人に数種類の軽い危険因子が重なり合う傾向が見出され、それぞれの研究者によって「多重危険因子症候群」、「死の四重奏」、「内臓脂肪症候群」、「シンドロームX」等の用語が提唱された。この状態で喫煙が加わると動脈硬化は加速する。他に、高LDLコレステロール、高尿酸血症、脂肪肝、肝機能障害等を伴うことが多い。いずれの病態も相互に関連するため、全体像をメタボリックシンドロームと考えることが合理的である。
 これらの異常は本来、人類が進化の過程で、飢えや寒さ、闘争等の厳しい環境に適応して獲得した遺伝体質(倹約遺伝子、節約遺伝子)と、現代文明の中の生活習慣(高カロリー、高脂肪の食事、運動量の低下)が適合していないことが原因と考えられる。日本人は西洋人より軽い肥満で病気が起こりやすく、節約遺伝子を持つ人が多い民族と考えられている。
 多くの代謝異常は検査に異常があっても自覚症状が生じる前であれば、生活改善でかなり改善可能である。進行するにつれて体内の故障が累積し、治療の負担も大きくなる。病気の自覚症状が現れてから元の身体に戻すことは困難である。
 メタボリックシンドロームは、そもそも動脈硬化性の心臓血管病予防のために提唱された概念で、それ自体を一つの病気と考えるべきものではなく、動脈硬化の起こるリスクを持った「状態」として理解する必要がある。
 リスク軽減のために、食事、運動等生活面の節制が重視されているが、一律に同じ方法で改善できるという保証はない。個人の生活、体質、年齢等様々な要因を考えて対策を講じ、その効果を調べることを繰り返して経過を観察する必要がある。個々の方針については保健師、医師等と相談することが望ましい。
 特に食生活では過食(不要な食物の摂取)を減らすことが、非常に重要である。このことは、なぜかマスコミ経由の情報ではほとんど取り上げられない。他のさまざまな点でもマスコミの情報は現実の医療情報と乖離することが多いので注意が必要である。
 尚、長年メタボリックシンドロームの状態が続いた人は、既に水面下で動脈硬化が進行していて、健康づくりのための運動が危険を伴う場合がある。この場合、安全のためにまず病状を確認し、必要な場合は治療を始めてから運動することが必要である。特に中高年世代で積極的に運動を始めたい人には、まず運動負荷試験を受けられることをお勧めする。

(*)生活習慣病について

 平成8年に当時の厚生省が提唱した概念であり、定義は、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」とされ、例として、糖尿病、肥満、高脂血症、高尿酸血症、循環器病、ガン、歯周病、高血圧症、呼吸器疾患、肝疾患等が上げられているが、これは決して生活習慣が病気の原因という意味ではない。
 生活習慣病という用語の始まりは体質や老化のような内部要因、病原体や環境のような外部要因と並んで生活習慣要因に着目し、予防や治療の上で重要視する国の方針を示した行政用語である。現実的な解釈としては「自分の体質に合わない生活は身体に良くない」という考え方が適切であろう。
 尚、メタボリックシンドロームは医学用語であるが、この考え方の中に含まれる病態の一例である。時にマスコミ報道等で見られる、「メタボリックシンドロームが生活習慣病を起こす」という表現は間違いである。

(*)家庭血圧の測定法について

 血圧は常時変動しており、全体をとらえることは容易ではない。高血圧の容態や治療効果を見る上で、自分で血圧を測定することは非常に重要である。2014年版日本高血圧学会ガイドライン(JSH2014)では、高血圧治療の上で医師が診察時に測定する血圧よりも重要度が高いと位置付けられた。
 家庭血圧が135/85以上の場合に「高血圧」と診断されるが、1回だけではなく、記録をとりながら経過を見ることが大切である。
以下のような条件で、年間を通じて測定すると良い。
・必ず腕(上腕)で測定する装置を使用する。
 手首、指など肘より先での測定は不正確である。
・基本は1日2回、座位で測定する
 起床後1時間以内(排尿後、食前、服薬前)、
 就寝前1時間以内。
 特に朝の測定が大切である。朝が高い場合に心臓、血管の負担が強く病気を起こしやすい。これに気付かず、日中の測定だけで診断すると高血圧が過小評価される(仮面高血圧)
・測定は1回以上。(2回の平均を推奨)
 繰り返して測定し、低い数値だけを記録すると容態の過小評価、誤診につながる。数回測ったときには全部を記録しておき、経過を医師と相談する。
 経過が分かるような一覧表やグラフは非常に役に立つ。体重、体調や気温、ストレスの状況などのメモがあると更に良い。
  最近ではIT技術を利用してパソコンやスマートフォンでデータを取り込み、管理する血圧計も普及している。

(*)検査の正常値、基準値、参考値という表現について。

 各種の検査で正常基準値を求める方法は、まず自覚症状や既往症がなく、外見上健康な人を大勢集め、数値の分布を求めることから始まる。しかし臨床医学では、病気を予防するために、外見上健康な集団を長期間(時には数十年間)追跡調査して病気の起こり方を調べ、発症のリスクを減らすために介入すべき基準値を設定する方法がとられる。生活の改善を勧める基準、薬を始める基準など、対策により複数の数値が示されることも多い。(例:高血圧、糖尿病、脂質異常など)
 自覚症状のない段階で将来の発病リスクを予測し、それを回避することは予防医学の基本的な手法であり、人間ドックの目的そのものである。一見健康に見える人が異常と判定されるのはこのためであって、時折にマスコミに登場する「健康人を病人に仕立てる陰謀」という表現は無知に基づく誤解である。

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